今月の少女 – BUTTERFLY | [X X] (2019) : ふたたび巡り合った世界【日本語訳】

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이달의 소녀 – BUTTERFLY | [X X] (2019)

다시 만난 세계

今月の少女  BUTTERFLY | [X X] (2019)

ふたたび巡り合った世界

by weiv 2019.03.04

 

純度が非常に高い。2019年2月19日にリリースしたリパッケージアルバム「XX」(マルチプルマルチプル)のタイトル曲"Butterfly"とそのミュージックビデオ(MV)と接した感想だ。 

 

静かだが張り詰めたバース(Verse)と満開のコーラスは、限界を越えようとする熱望と飛行による解放感を交互に伝え、K-POPで通常使われる水準より強いリバーブ効果は、飛び立つ蝶の前に広がる風景の華やかさを感じさせる。振り付けは激しくなるのと同時にすばやく変化し、シーケンスごとに始まりと終わりがはっきりしていて、一種の提案に近い。

振り付けをさらに見てみると、腕と足が大きく速く伸びていく姿、体全体を動ながら作る線、メンバーたちが正確な位置に移動しながら作り出す隊形が目を引く。また、衣装は手と顔の肌だけが露出している単色のブラウスとズボンで、振り付けを強調すると同時にメンバーたちが振り付けを正確に遂行するよう手助けする。手首のフリルは振り付けから「蝶の群舞」という印象が効果的に表れる。

面白いことに振り付けが公開されて以来、「男性ドルのダンスのようだ」という反応が多かった。上に挙げた"Butterfly"のダンスの属性は、これまでガールズグループのダンスにあまり適用されてこなかったり、少なくとも消費者がそのように受け入れてこなかったという意味だ。この属性は共通して舞台上の身体の機能的動きに集中させる。そのような属性を持つ振り付けの対蹠点には「重要な部位(プライベートゾーン)」で分けられた肉体を見せる振り付けが置かれているはずだ。もしかすると消費者は、多くのガールズグループの振り付けで前者より後者を見てきたのかもしれない。

"Butterfly"の振り付けには、いわゆる「男性のダンス」の本質と言える誇示的で威嚇的な面(俗に言う「ホラ吹き」)がない。むしろ、絶えず優雅で流麗な線を描くために、非常に節制された動きを許すだけだ。それでも「男性ドルのダンスのようだ」という反応が出るのは、この振り付けが身体の卓越した挙動を効果的かつ丁寧に表すのに成功したことを意味する。つまり、メンバーたちは男性を真似ていなくてもこの曲のステージにおいて肉体以上の何か、つまり人間として提示される。

 

MVの果敢な構成も、このような戦略を手助けしている。K-POPのMVは、多くの場合、ある曖昧な状況の中に置かれているメンバーたちの演技シーンや、MV公開後のステージを予想できるよう、振り付けや衣装などの視覚的要素を示すパフォーマンスカットを相次いで行う。しかし"Butterfly"のMVは、公開後「さぁ、メンバーバージョンを見せてください」という不満の声が片隅から聞こえてくるほど、MVの中のメンバーたちの姿がパフォーマンスカットに限定されていた。残りの席を埋めるのは、中国・香港/深セン、フランス・パリ、アメリカ・ロサンゼルスなど世界各地で撮影した女性たちの姿だ。

実は、メンバーたちの演技の場面は、すでに今年1月1日から50日間にわたって公開されたティーザーに含まれている。このように果敢にもメンバーだけが置かれた閉鎖的な「世界観」をMVの前に出してしまった結果、MVではメンバーのパフォーマンスが集中的に浮上し、K-POPの文法から脱して拡張された世界が映し出された。その中の女性たちはどこかを走ったり、(ゴルフクラブのように)松葉杖を振り回すなど、これまで「今月の少女」が出したMVの中の場面を連想させる行動をする。これを通じて観客は、もしかすると次のような誘いを受け入れることができるだろう。: 私たちは同じ運命を持って生まれた – もっと高く飛んでいけという。

MVのフォーカスの中に男性が登場しないということは、この誘いに説得力を加える。多くの経験を通じて、消費者たちは女性と男性が画面に一緒に登場すれば2人はロマンスに陥るということを、自分が知っているという事実も知らないほどよく知っている。"Butterfly"のMVは通行人を除いた男性を完全に排除し、その中の女性たちが異性愛叙事の構成要素に限定される結果を防ぎ、彼女たちがいるところ、そして彼女たちが向かったところだけを明らかにする。これはもちろん「このMVはそんなに多様な女性を提示するのに、なぜ男性がいないのか」という、また別の不満の声を生んだ。

それもそのはず、"Butterfly"は歌詞にさえ、片思い、誘惑、別れなどの古典的なテーマを扱っておらず、ただ新しく生まれ変わろうとする、そしてもっと高い所に進もうという熱望だけを盛り込んでいるからだ。このような熱望は極めて人間固有のものだが、非常に驚くことにそれがK-POPガールズグループのタイトル曲に含まれたことはそれほど多くなく、ただ少数の聴き手を前にする「収録曲」を通じてのみ、密かな系統を繋いでいくことができた。

 

"Butterfly"が提示する歌詞とイメージには、メンバーたちを男性を真似るものとして提示せず、それと同時に男性の視線に囚われないようにするための仕掛けが、一貫して、そしてぎっしりと置かれている。このような断固とした制作が必要な理由は、ガールズグループのメンバーが単なる人間として提示されるために必要な脱出速度を著しく高めるためだ。映画、ドラマ、演劇、ミュージカルなどのショービジネスの中の女性俳優は、運が良ければ、消費者が満足できる魅力的な肉体、あるいは彼らが劇外で解消できない攻撃性を受け止めるゴミ箱に留まらず、劇の敍事を通じて自分の意志と誇りを持つ人間を代弁することができる。ただし、それさえも男性俳優に与えられる機会に比べればわずかなだけだ。しかし、女性歌手にはそのささいな機会すらなかなか与えられない。少なくとも韓国では、指折りの女性ソロ歌手だけが、自分自身が主人公だという叙事(「連続ヒットの神話」ないし「アーティストの歩み」など)を、市場で与えられてから、自らを人間として、世界に語るべきことのある存在として掲げる機会を得る。ボーイズグループはただ顔を出しただけでも誰かを代弁することができ、肉体的魅力は彼らをむしろ高い次元の存在に引き上げ、そのような魅力が見えないなら消費者によって発明される。片や、ガールズグループの肉体的魅力はポルノになり、肉体的魅力を披露できなかったガールズグループは淘汰される。いくつかのガールズグループがこの秩序に挑戦したが、次の行動を約束されたグループは挑戦したグループより少なく、彼女たちさえ歌詞やパフォーマンスなどを通じた(まさに「ヘテロ・ベイティング」という)一抹の妥協が必要だった。ガールズグループの消費者の中で、人間の歌を聴こうとした人々はいつだっていたが、産業の大きな流れに影響を及ぼすには当然その数が少なかった。

卓越にも、"Butterfly"が披露する歌詞とイメージは、これらの制約を明示的に否定しないと同時に、塩と砂糖を行き来しながら絶えず新しい刺激を求める市場の水車に(皮肉にも「ガールクラッシュ」と呼ばれる)「私たちは彼らとは違う」という宣言で自らを押し込めない。ただ、そのような制約が全くないかのように、ただ、より遠く、一緒に飛んでいこうとする熱望を、高い密度で示しているだけだ。まるで重力がなかったように、蝶たちの本質は高さと速度だけだというように。

 

その後に残るのは、ただひたすら広がる地平線の前から聞こえてくる嘆声だけだ。サビで繰り返し裏声となる「Fly like a butterfly」は、敢えてボーイズグループの油気のある歌唱を真似する必要がないかのように、あるいは暗い居酒屋で口ずさむメロディーを提示する理由がないように、か細いようで強烈な印象を残す。通常のタイトル曲よりもう少し長い時間(3分57秒)を要するほど、何度も嘆声を繰り返す曲の後半部では、むしろ一番早い速度、一番高い位置に到達した時に聞こえてくる悲鳴や歓声のように聞こえる。

その卓越さは性別の任意の区分を滑稽にする。製作者と実演者の区分、すなわち分業を通じて高度化され、実演者と消費者との間の境界を曇らせるメカニズム、つまり同一視することによって原動力を得る産業の産物について話しておきながら、「主体性」といった言葉を動員し、これを緩慢に賞讃したとき(個人的にはこれを「主体思想」と呼びたい。) に伴う、古くて消耗的で支離滅裂なアイドリングを敢えて起こすつもりはない。しかし、"Butterfly"が提示する情緒は、高い自尊心と誇りを持っており、そのための用い方が精巧であると十分に言えるだろう。 断固たる制作と強い没入を見せる実演を通じて、ガールズグループも世界の中の自分、そして自分の前の世界に対して歌うことができるという刹那の解放感を、一部の消費者にプレゼントする。このような瞬間は、これまで「今月の少女」がどのような行動を踏んできて、今後どのような行動を踏むかと関係なく、いくつかの記憶に長く粘り強く残る。私たちはすでに似たような経験をしたことがあるからだ。どういうわけか、あまりにも長く生きてしまった一人として、私は今から12年前に発表されたある歌を思い浮かべた。そして、その歌から軽薄さを超える部分だけを取り払おうとした多くの試みを思い出す。"Butterfly"は果敢に、軽くその線を超越している。

 

今月の少女とはどのような「少女」なのか?: 今月の少女(LOONA) “Butterfly”【日本語訳】

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이달의 소녀는 어떤 ‘소녀’인가요?: 이달의 소녀(LOONA) “Butterfly”

今月の少女とはどのような「少女」なのか?: 今月の少女(LOONA) “Butterfly”

by 잡초 2019.03.11

 

あなたはK-POPの「少女」をどんなイメージで思い浮かべるだろうか?おそらく東洋人の外形と制服を着た10代(実際は10代でなくても)、さらに純粋ではにかむ表情と振り付けを披露する、このような女性に代表されるイメージがあるだろう。こういったK-POPにおける少女は、ガールズグループに求められるイメージでもあり、ミュージックビデオや音楽で再現するイメージでもあった。それほどに、K-POPが織り成す少女とは、韓国社会が見つめる偏狭な少女像のイメージを踏襲すること以上のものではなかった。

しかし、2月19日にリリースされた「今月の少女」リパッケージアルバム[XX]のタイトル曲‘Butterfly’は、K-POPにおける少女とは別の少女たちを再現しようとした。K-POPにおいて「少女」という単語が抱いていたイメージの境界を破るように、多様な人種をはじめ、外的に多様な少女を、また自分だけの話をする少女を描こうとした意図が明らかであった。

 

特に、ミュージックビデオではこれまでK-POPの主人公になれなかった人物が登場した。これまで「エキゾチック」な外見という修飾語に過ぎなかった外的多様性がついに再現された。これを通じて、無国籍の少女、すなわち誰もが「今月の少女」になれることを表現している。多様な人種だけでなく、様々な体型(身体的条件)で表現した外的多様性に加え、それぞれの人物が代弁する物理的抑圧を演出した。黒人女性が駆け抜いて壁にぶつかる姿、ヒジャーブをかぶった女性、ユニフォームを着た中華圏の女子学生たちが机を踏んで立ち上がって空を眺める姿などは、各々が直面した抑圧の状況を見せてくれる。

それまで「今月の少女」の世界観は興味深かったが、あまりにも堅固で、その世界観の中で陥没しているような印象を受けたりもした。しかし、今まで彼女たちの世界観で使われた様々なモチーフ−運動靴、片足のギプスと松葉杖、リンゴ、片目を隠したアイマスク、トンネルと道路−は今回のミュージックビデオで再登場し、多くの人物の自由と解放というメッセージと結びついた。これを通じて、自分たちの世界観を越え、普遍的なメッセージとして自由と解放を表現しようとした。

 

また、この曲の歌詞は愛されたい少女を描かない。少女は愛を語るだけの存在ではない。「今月の少女」の以前の活動曲‘Hi High’を覚えているだろうか。この曲の「修学能力試験よりもっと愛は残酷だ!」「キンパのように君は マンドゥのように甘い!」という歌詞は「무리수(やりすぎ、強引)」な歌詞ではあったが、「修学能力試験 (大学入学のための試験)」「キンパ (のり巻き)」「マンドゥ (餃子)」といった単語で韓国の10代の少女が感じる愛を語ろうとする確実な意図があった。また、「男には気をつけないと」「私の愛は簡単にあげたくない」などの歌詞で従来のK-POPの受動的で内気な少女のイメージをそのまま受け継いでいる。同じアルバムのもう一つのプロモーション曲だった‘favOriTe’はそれよりは受動的な要素が少なかったが、結局2曲とも少女が恋に落ちた姿を描いた歌詞だった。

 ‘Butterfly’は少女たちだけの話だ。蝶のように飛び、より遠く、より高く飛びながら互いのそばにいる少女たちを描き出す(「Fly like a butterfly, I better be around you」)。

 

시작은 작은 날개짓

이제 내 맘의 Hurricane

Been been there never been been there

세계가 점점 작아져 가

 

はじまりは小さな羽ばたき

今では私の心の Hurricane

Been been there never been been there

世界がだんだん小さくなってゆく

 

そのとき少女として起こした小さな羽ばたきが蝶の効果をもたらし、ついには以前には届かなかった所へ一緒に行くというメッセージは、これまでのK-POPの少女の話の中で最も能動的だ。彼女たちの世界は狭くなるのではなく、どこへでも行けると信じているから小さくなる。このように語ってくれるK-POPガールズグループが必要だった。

 

歌詞だけでなく‘Butterfly’のステージも以前の曲と比較する価値がある。‘Hi High’のステージでは、磨り減ったテニススカートをはいてキュートにジャンプする少女の振り付けを、‘favOriTe’では定番の制服衣装とそれに似合わない振り付けを披露し、ファンから批判を受けた。‘Butterfly’の導入部分の振り付けは、カメラの正面で 「寝そべる」振り付けだ。長い上着とズボンのシンプルな衣装でなかったら不可能だったはずだ。

振り付けにはそれぞれのスタイルがあり、特定の方が優れているとは言いたくない。よく、激しくキレのある振り付けが格好いいと評価されるが、柔らかくラインを強調する振り付けには、それとは違った魅力があるというだけだ。しかし、ガールズグループの振り付けが一方に偏っていたのは事実である。上下にクロップされた(へその出る)不便な衣装がその主な原因だったことも明らかだ。ステージ上のガールズグループにとって「自由と解放」は、ある意味では衣装とも言える。今回の活動で見せてくれた淡泊な衣装は、彼女たちが振り付けに集中するのに最適で、だからこそ可能な動作が多かった。ミュージックビデオを通じて表現しようとした メッセージをステージでも妥協しなかったという点が何よりも意味のあるポイントではないだろうか?

 

実際、「少女」という言葉にどれだけ多くの意味が宿っているのか、私は女性を少女と呼びたくない。しかし彼女たちが「少女」と名づけられた以上、彼女たちはある少女のイメージを築いていくしかない。そのため、「今月の少女」は自分たちの行動を通じて逆説的に既存の少女のイメージを壊す可能性を持つ。今回の活動を通じて「誰でも今月の少女になれる」というメッセージの真の力がようやく見え始めた。この可能性を拡張し続けていきたい。これまでK-POPの少女たちが届かなかった世界に私たちを招待することを期待する。

 


[MV] 이달의 소녀 (LOONA) "Butterfly"

 

“隠れて聴く名曲”、“儒教ガール”… ウェブバラエティ「文明特急」はどのようにしてミレニアルの流行になったのか【日本語訳】

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‘숨듣명’ ‘유교걸’…웹예능 ‘문명특급’은 어떻게 밀레니얼 대세가 되었나

“隠れて聴く名曲”、“儒教ガール”… ウェブバラエティ「文明特急」はどのようにしてミレニアルの流行になったのか

by 이유진 기자(イユジン記者) 2020.09.26

 

YouTubeウェブバラエティ「文明特急」を作ったイ・ウンジェ、ホン・ミンギPD

●ミレニアル世代の日常に集中する“隠れて聴く名曲”、“儒教ガール”これが“新文物”

「外では知らないふりをするけれど、家では真似して踊ってみたあの歌!」「カンサート(カン*+コンサート)を開いてください」

<文明特急>の司会者イ・ウンジェPDが、5月4日に公開したYouTube動画で話した言葉だ。

*깡(カン)… 懐かしさ、素朴さ

 

MBC <遊ぶなら何する?>が「GANG」のヨクジュヘン*現象を扱いながらRainを呼んだとすれば、“隠れて聴く名曲(スムドゥンミョン*)”として先にRainを呼んでいた番組が<文明特急>だ。

*역주행(ヨクジュヘン)… 直訳は「逆走行」。転じて、音楽や映画が再ヒット、再ブレイクすること。韓国では、Rainの「GANG」が再流行している。

*숨듣명(スムドゥンミョン)… 숨어 듣는 명곡(隠れて聴く名曲)の略。

 

2018年2月、SBSの<SUBUSU NEWS>の1コーナーとしてスタートした。

世代共感トーク番組“再会した世代”シリーズを経て、“隠れて聴く名曲”シリーズが人気を集めるにつれ、昨年7月にYouTubeに独立チャンネルを開設した。<文明特急>の購読者数は24日基準で80万人で、1年でSUBUSU NEWS(59万人)を追い越した。

イ・ウンジェ(30)、ホン・ミンジ(28)PDがコーナーを始めた時は想像もできなかったことだった。

 

<文明特急>のスローガンは「グローバル新文物伝播プロジェクト」だ。ミレニアル世代の日常と関心事から題材を探った。

最初のエピソード「ジェジェの非婚式」は非婚主義者は祝儀をどう返してもらえるかという悩みから始まった。頭髪自由化に反対する国会議員・保護者代表を回りながら討論を行うこともあった。

10代20代の日常を才気に満ちた企画で紐解くという評価を受けた。

 

家父長的な環境で育った女性たちが自嘲的に使う新造語“儒教ガール”を流行させたのも<文明特急>だ。

今年1月に歌手イ・ヒョリのヒット曲「U-Go-Girl」を改詞したパロディ“儒教ガール”を発表した。

「私は長女だけど、財産相続は弟のところに行くって?ダメ!」というナレーションが圧巻だった。

 

“ジェジェ”と呼ばれるイPDの人気は芸能人に劣らない。「ヨンバニン*」(芸能人と一般人の合成語)というニックネームが付けられ、アイドルグループに対する格別な態度で話題になった。

*연반인… 연예인(芸能人)と일반인(一般人)を合わせた造語。

実際、踊ったり歌ったりしても無理に一発芸を求めず、プライバシーや敏感なテーマには触れなかった。

 

「SBSが出した息子」と呼ばれた<文明特急>は、秋夕特集パイロットとして地上波テレビに進出する。

芸能界で最も忙しい2人、イPDとホンPDと、今月14日SBS木洞社屋で会った。

 

“90年代生まれの私たちが企画・素材を決める… 18-24世代の共感を得ました。”

アイドルも専門職で感情労働者… 楽な雰囲気を作るので、 楽しく撮りましょう
撮影時でも“人間対人間”に配慮… 戻ってくるのはコンテンツの人気です

 インタビュー前に写真撮影を先に進めた。カメラの前に立つことに慣れているイPDが、余裕を見せながら絶えずポーズを変えた。

「ジェジェ本当にすごい」ホンPDの反応にイPDが応える。撮影場所の社屋13階の廊下が2人の笑い声でいっぱいになった。撮影中ずっと冗談を交わした。

忙しい日程のため許された時間は1時間。腕時計を見ながら時間を確認したイPDが「準備できました」と言いながら記者を促した。本格的なインタビューに入ると、冗談は消えた。真剣かつ落ち着いた姿勢で企画力の源泉などを説明した。追加電話インタビュー(18日)も反映してまとめた。

 

●今まで見たことがない、それ自体が新文物

−「儒教ガール」が人気を集めてから、「K長女*」という言葉が流行ったじゃないですか。

*K-장녀… Koreaの頭文字「K」と長女を意味する「장녀」を取って合成した流行語。長男に求められる責任感と、伝統的な家父長的社会の下で求められる女性の役割の両方を課せられる。

【参考】'큰딸은 살림 밑천' 아직도 이 말을 듣고 살아?…'K-장녀'를 거부합니다-아시아경제

 

イ・ウンジェ(以下イ)= (ホンPDを見ながら)“儒教ガール”が最近大学の講義にも出ているの知ってる?“儒教ガール”の始まりは、会社に戻る車の中で、ミンギ(ホンPD)が投じた「私も長女だけど、従兄弟が財産相続を受けていた」という一言でした。私は次女ですが、周りに弟がいる姉が特に多いです。名節が来ると、そういうことに悔しさでいらいらします。“儒教ガール”のナレーションは、ミンギと知人たちの経験談から生まれました。

ホン・ミンギ(以下ホン)= これが本当のアイテムです。私が祖母に送るメッセージを歌で表現したものでもあります。チームの強みは、素材や企画決定権者が私たちだということです。経験談を語ることは誰でもできますが、コンテンツ素材として採用されることは容易ではありません。私たちの場合は、私たちがやると決定するだけです。<文明特急>が、18-24世代から共感を得たのは、この部分が重要だったと思います。ほとんどの組織では90年代生まれが決定権者ではないじゃないですか。

 

− コンテンツ素材の決定権は最初から与えられたものですか。

イ= 当然、最初からあったわけではありません。アイテムを持っていくと、 チーム長が苦労することが多かったんです。それでも私たちを新しく見て、たくさん受け入れてくださいました。そのおかげで、今まで続けることができたと思います。

 

「隠れて聴く名曲」も日常からアイデアを得た。オンラインコミュニティなどを中心に「働きながら気軽に聴く歌謡」という意味の“労働歌(노동요)”の母音が流行していた時期だった。

労働歌が溢れている中で、クァンヒらが属していたグループZE:Aが歌った曲「Mazeltov」を発見した。「ラテンガール」「メキシカンガール」「コリアンガール」「ジャパンガール」など一見理解しがたい歌詞が出てきたこの歌は、2010年の発表ではヒットしなかった。

 

ZE:Aのメンバー、ハ・ミヌと「Mazeltov」の作曲作詞家ハン・サンウォンに直接会い、歌詞の意味について尋ねた。ハ・ミヌは「曲を初めて聞いてみて、プロモーションビデオの撮影現場で涙を流した」と裏話を伝え、ハン・サンウォン作曲家は「メンバーたちに申し訳ない」と冷や汗をかいた。

曲を記憶する人々には思い出を、そうでない人々にはそれ自体で新鮮さを与えるコンテンツだった。

 

その後、Code Schoolの「Bbiribbom Bberibbom」(2010)、ナルシャの「ピリパパ」(2010)、F-ve Dollsの「あれやこれや」(2011)、Rainの「GANG」(2017)など、今のK-POPの土台となった、幼稚だが感情に率直で堂々とした歌詞の曲を続々と発掘し、水面上に「クルオル*」する(引き上げる)。

*끌올(クルオル)… 끌어 올린다(引き上げる)という言葉を短くした新造語。

 

下手すれば、歌や歌手に対する戯画または嘲弄につながる危険もあったが、<文明特急>は“一線”を超えなかった。

第一に、おもしろくなければ笑う必要はない。第二に、無理な要求なら断る。第三に、アイドルを専門職業人として待遇する。3つの原則を掲げた。

大手アイドル事務所が先にコラボレーションを要請し、アイドルファンが歌手に<文明特急>への出演を提案するという珍しい現象は、こうした原則のおかげで可能になった。

 

− <文明特急>はアイドルを専門職として扱うと言いました。会社員として感情移入したと聞いたのですが。

ホン= はい、そうです。とても(感情)移入しました。頑張った成果物をきちんと評価してもらえない時や、成果として認められない時、悔しいじゃないですか。アイドルも会社員で言えば、アルバムが一種の成果物です。ダンスの練習もどれほど頑張ったことでしょう。ところが、行く先々で愛嬌を見せてほしいという要求だけ受け、理想のタイプは誰か、彼氏はいるかという質問がまず出るのです。これは本当に悔しいことです。そのような場所で、私たちの番組ではこんな質問、こんな要求はしないでおこう。チームメンバー全員が共感しました。

 

−「惻隠(そくいん)の情*」を感じたのですね。

*측은지심(惻隠之心)… 韓国文化特有の言葉で、同情やあわれみに近いが、ただ同情するのではなく、他人の苦痛を理解し、手助けしようとする思いやりの心のようなもの。

 

ホン= それは違います。哀れではありませんでした。だって、私たちが一番哀れなんです。

イ= そうです。私たちが一番哀れです(笑)だから、ゲストを高圧的な態度もなく接することができました。「やってみろ」こういう気持ちは全くありませんから。

ホン= 私たちの番組では、感情労働はジェジェが直接します。

イ= アイドルメンバーたちと目が合うと、「大変ですよね?私たちの人生がそうですね」と笑って乗り越えます。

 

ホンPDは自身のブログに「90年生まれはプロブルピョンロ*という修飾語を作った栄光の初世代だ。私たちのように嫌なことを嫌だと言う後輩に背を向けないようにしよう。最後に私たちが怒っていた大人たちの姿を絶対に忘れないように」と書いた。このような心構えが番組制作にもそのまま投影された。

*프로볼변러(プロブルピョンロ)… 直訳は「プロ不便者」で、無駄にケチをつける人を皮肉った言葉。프로(プロ)、불편(気まずい)、러(〜する人)の合成語。

 

ポータルサイトで「プロブルピョンロ」を検索すると、「すべてのことに敏感で、何でもないことでも否定的な世論を形成し論争を煽る、普通とは違う人」という説明が出てきますよね。ホンPDは、プロブルピョンロであることを誇らしく思うべきだと言いました。

ホン= 学生時代、先生たちとものすごく争ったんです。中学校の時、出席簿の名前の横に住所を書くんですよ。町の特性上、賃貸マンションに住んでいる友人が多かったのですが、住所を見た後、彼らに対する人々の態度が変わるのを見ました。私は学校に住所記入欄をなくすべきだと要求しました。でも、無くならなかったんですよね。それで、全てのクラスを回りながらナイフで出席簿を破りました。学生部に連れて行かれてすごく怒られたけど、私が悪かったとは思いません。最近、母が急にこんなことを言いました。以前は、なぜじっとせず、ことあるごとに不満が多いのかと思っていたけれど、今考えてみると、私が正しかった。最近も、結婚式場で新婦が、いくら夫と喧嘩しても朝ごはんを必ず作ってあげるという“誓約”をすると憤慨しています。式場では誰も同調してくれないのに、私たちのチームに来るとみんな「おかしいんじゃないの?」と言って私に相槌を打つんです。 ああ、私たちはこんな人たちが集まるようになってしまったんだな。

イ= 大学生の時は「自炊をして、よく酔う」という冗談を気兼ねなく言いながら遊んでいました。面白い冗談だと思って笑って楽しんで消費する人でした。ある瞬間にこのようなことは間違っていると気づきました。完璧な人はいないので、些細な失言をしたのではないか絶えず自己検閲をします。たまに過剰に検閲をしているのではないかと思うこともありますが、検閲しないよりは激しく検閲したほうがいいと思うんですよ。女性はもちろん、若くて、社会問題に関心のある人が多い職場なので、私はむしろ同僚たちを見ながら学ぶことが多いです。

ホン= 気まずさ(居心地の悪さ)と面白さは違う領域だと思います。気楽でありながらも充分に面白い番組を作ることができます。

 

− あるアイドルマネージャーが「マネージャーとして働く10年間で、こんなに楽な撮影は初めて」と話していました。 <文明特急>が特別に楽な現場になった他の理由はあるのでしょうか。

ホン= 相対的に自由な雰囲気です。本来、撮影現場ではスタッフのリアクションが大きいと音声がかみ合うと言って静かにさせます。私も最初はそういうふうに習いました。演出者になってみたら、現場で(スタッフが)笑うのを無理に笑うなと言われることがおかしな話でした。制作陣と出演者として会うには会うけれど、“初対面”の人たちが集まった席じゃないですか。一緒に笑ったり感情表現もできると思います。笑い声が大きすぎるなら、編集時の声を少し下げればいいんです。人間対人間として気楽に接することができるように配慮しようと思いました。

 

− アイドルグループにたくさん会って感じたことがあると聞きましたが。

イ= 業界とアイドルの間の甲乙関係*は確固たるものです。(アイドルの方は)会った時に過剰に挨拶をしたり、過剰に明るい方たちが多かったです。最初は性格が良い方が多いと思いました。しかし、芸能界で働く人に多く会って、彼らがどんな環境で働いているのかを直接目にしたら、見方が180度変わりました。ああ、これは問題なんだ。
*갑을관계(カブルグァンゲ)… 強者と弱者の関係のこと。

 

− 感情労働に苦しんでいるんですね。

ホン= はい。私たちと変わらない労働者なのに、会社で笑うことだけさせられるなんて、本当にできないことじゃないですか。

イ= 私ならとっくに退社していました。

ホン= でもこの方々はやっています。それもあまりにも幼い年で。無条件に明るくなければならないし、過剰に挨拶しなければならないし、こんな事が職業意識で呼ばれるとなるとちょっとおかしいじゃないですか。アイドルだからといって、撮影現場で笑い続けることはできません。合間合間に他の考えをすることもあり、無表情になることもあります。このような部分は編集する時に切り取れば良いんです。良い内容でも出演者が態度論争の当事者になりうる余地があればカットします。編集者が自分のことではないと大雑把に放送したら、悪口を言われるのはアイドルじゃないですか。どんなに悔しいでしょうか。

 

− “隠れて聴く名曲”シリーズが人気を集めるにつれ、既存の放送局が<文明特急>の素材を借用したコンテンツを発表し始めました。 MBCの映画紹介番組<出発!ビデオ旅行>には“隠れて見る名画”というコーナーが設けられ、Mnetバラエティ<TMIニュース>は“隠れて聴く名曲”をテーマにした番組の放送をエクスポートしました。一部のネットユーザーは、放送局がニューメディアコンテンツをコピーしたと批判しましたが、お二人はどうお考えですか。

ホン= 公式的に立場を表明するようになるのではと慎重になっています。<文明特急>をきっかけに、他の番組で“隠れて聴く名曲”が話題になることは、「本気で努力したが、日の目を見ることのできなかったコンテンツを引き上げよう」という企画趣旨の通りです。番組に出演した方たちがうまくいけば私たちも嬉しいです。最善を尽くしてコンテンツを作り、私たちの役割はそこで終わりだと思っています。

イ= 空の下に新しいものはないと言うじゃないですか。私たちもインターネットの“ミーム”を使ってきて、素材として使ったのですから。相扶相助*のことです。

*상부상조(サンブサンジョ)… 韓国の四字熟語で「持ちつ持たれつ」の意味。

 

 “人生を変えなくても働ける制作環境を作りたいです”

● 「ティッシュインターン*」がニューメディア産業の錐(キリ)になる

*티슈인턴…ティッシュのように捨てられることから、短期的・臨時的な仕事のことを「ティッシュインターン」と言う。

2人のプロデューサーは2015年に<SUBUSU NEWS>第2期インターンとしてSBS報道局ニューメディア部に入社した。特定の職業を目標にしたわけではなかった。就職の一歩手前で数え切れないほど挫折し、今すぐにでも就職口が必要だった。当時の採用公告によると、勤務期間は6ヵ月、週5日1日7時間勤務、日当は4万5000ウォンだった。一度使われ、捨てられるという意味の「ティッシュインターン」だった。イPDはカードニュースを作るストーリーテラー、ホンPDは映像編集のインターンとして出発した。

6ヶ月のインターン生活が終わると、肩書きが常勤フリーランスの「エディター」に変わった。月給が200万ウォンに及ばないほどの水準に上がった。SUBUSU NEWSが2018年1月にニューメディア部門のサービスを統合・担当する子会社SBSデジタルニュースラボとして独立し、二人も子会社所属の正社員となった。ニューメディア産業も、<文明特急>も急成長したが、彼らは給料をもらう会社員だ。イPDのニックネーム「ヨンバニン(芸能人+一般人)」には芸能人並みのスケジュールを消化しながらも会社員の給料をもらう現実も込められている。

 

− イPDは、「就活(就職活動)」の最初の学期に履歴書だけで50枚以上を書いたと言いました。2人ともSBSに入社した後もしばらく就活を並行しなければなりませんでした。フリーランサーの身で求職活動をするのは簡単ではなかったはずですが。

イ= 就活生みんながそうだと思います。大変な時期でした。特に面接で落ちるということは基準が明確ではないですよね。落ちたら、自分が何を間違っているのか、あちこち探すことになります。自分のせいというより、外部の環境によるものが大きいはずなのに、しきりに自分から原因を探ろうとしてきました。本当に終わりがないトンネルのようでしたが、 チョンボ*したので仕事ができました。 「尊重(チョンジュン)し耐える(ポティダ)」と書いてください(笑)

*존버(チョンボ)… 존나게 버티다の略で、「ものすごく根気強く耐える」という意味。

ホン= 仕事の空白はなかったのですが、定着するところが必要だったようです。そうしているうちに「私はどうして定着しなければならないのか?」と思いながら、就職準備をやめました。まず、<文明特急>に出会ったことが大きかったです。会社ではなく、この番組に巣をかけたと言いましょうか。現在、会社のビジョンと自分がしたいことの方向性が合う状態なのでここで働いていますが、自分の可能性を会社の中だけに置きたくはありません。

 

薄給な労働構造が蔓延
10-20の若い子たちに
業界の長所だけ見えそうで
待遇問題を地道に指摘

− お2人は地道にチームの処遇問題を指摘し続けています。正社員になった後もです。会社員の立場では簡単なことではないのに、引き続き言及する理由があるのですか。

イ= 深刻ですから。正社員になりましたが、何者でもなかった「放浪者」就活生期間が長かったのです。人間のずるいところは非正規職だった時と今は気持ちが少し違います。自分でも驚きます。 正社員になる前は「やりたいようにやってやれ」という気持ちで臨んだからです。今はもっと慎重になりました。しかし、ニューメディア業界は依然として不安定で、安月給の労働構造が蔓延しています。私が言ったからといって今すぐ変わることはないけれど、一言でも言ってみるんです。あ、理由がまだあります。私を見て、この業界に入りたいという後輩たちを見て、「私が間違っているのかな」と思いました。どんな分野でも一長一短ありますが、若い子たちがあまりにもニューメディア産業の長所だけを見ているのではないだろうか。誰もが処遇改善のため努力していますが、不安定な労働構造を支えているのが現実です。私の断面だけを見て、業界に簡単に心を置くのは、考え直してほしいということを知らせたかったんです。

ホン= すべてのマスコミ、メディア産業が、若い人たちの労働力で回っていると思います。それでも私たちはニューメディアじゃないですか。「ニュー」が重要だと思います。肯定的に見れば、すべての積弊と差別的な労働構造を覆して、新しく出発できる空間です。この業界では一番先輩が私かジェジェです。先例がないんですよ。人を入れ替えずに働けるシステムを作ることにおいては、学ぶ先輩がおらず、組織がありません。そのため、今までではなくこれからが更に重要なんです。私たちもう一度始めたいです。ニューメディア製作システムは、既存の放送とは明確に違います。すぐには難しいですが、必ずやり遂げたいです。

− 切実さが感じられますね。

イ= 本当にどういうわけか堪えていたらここまで来ました。ミンギのような編集者は後の作業でこぼれる努力がものすごいです。本当に休めません。この場では素敵なジャケットを着て笑いながら話をしますが、人間らしさもなく生きています。椎間板ヘルニアともずっと一緒に生活していますよ。90年代生まれの特徴の1つが不平不満を言いながら与えられた仕事をとても誠実にやりこなしたのが問題だと言うでしょう。私たちがそのように生きてきたし、そのように働く後輩たちをたくさん見てきたため、残念な気持ちをさらに話すようになりました。

− その通りです。映画<リトルフォレスト>に憧れていますが、現実には<セッション>のように自らをむち打って生きている人々が多いです。

イ= 会社の文句を言いながらも、手はキーボードに向かっています(笑)

 

後輩と関係を結ぶ方法?
必要なものが見えたら
話す前に買ってきてください
「関心があるんだな」と感じられるように

− インターンの後輩たちに対する5つの原則について言及しています。1つ目、勤務時間外の連絡禁止。2つ目、モニターの表示禁止。3つ目、夕食のおごり禁止。4つ目、服の評価禁止。最後が鉄壁(固いガード)作り禁止です。鉄壁を作らない方法は感覚がよく掴めません。後輩との関係を結ぶ、鉄壁を崩す方法は何でしょうか。

ホン= お金を使うことです。コーヒーが必要そうだと思ったら黙ってコーヒーを買ってあげるんです。イヤホンがちょっと古く見えたら「イヤホンを変えてください」と言う前にイヤホンを買ってください。表現はしないけれど、私に関心があるんだなと感じるしかないでしょう。

イ= そうです。口を閉ざして財布を開けてください。

 

<文明特急>は10月2、3日にSBS TVの秋夕特集を組まれた。初の地上波放送だ。“スムドゥンミョン”に召喚された歌手たちと一緒に<隠れて聴く名曲コンサート>が開かれる。同時間帯の競争作がMBCの看板芸能<私は一人で暮らす>だ。

− TV編成の知らせを聞いてどうでしたか。

イ= 6月に秋夕特集編成のニュースを聞きました。TVの編成は、これまでずっと要求してきたものなので、驚いたりすごく嬉しかったりではなく、「やっとか」という感情が大きかったですね。

ホン= そうです。それでも嬉しいことは嬉しいことです。<人気歌謡>の装備とセットを借りて使いながら、私たちは大手企業の系列会社なのかと思いました(笑)

 

− 大きな山を一つ越えた気分でしょうが、<文明特急>チームの長期的な目標は何ですか。

ホン= 私たち2人の共通点は遠い目標を立てていないということです。<文明特急>も毎回6ヶ月後に廃止しようと言っていたんです。3ヵ月ずつ生き延びています。本当にやりたいことがあれば3ヵ月だけやってみて、それでもだめならきっぱり諦めます。

イ= そうです。3ヵ月が終わりのように。それで終わりだという覚悟でいつも臨むこともあります。

− <文明特急>がある日、突然終わるかもしれないという話に聞こえますが。

ホン= そうです。見ていただけなくなったら終わらせないと。

イ= ニューメディア業界は、あっという間に変わってしまうでしょう。ある意味、3ヵ月間持ちこたえることも本当にすごいですよ。

 

− お2人を「ロールモデル」にしている子に話したいことは。

イ= 私にはロールモデルがいませんでした。ニューメディア市場が浮上したばかりで、私のロールもこれまでになかったロールですから。10代の子が私を将来の夢に挙げるということを知って衝撃を受けました。誰かのロールモデルになりたくないです。ああいう生き方をする人もいるんだなと、軽く見てもらえればと思います。一つの願いがあるとしたら、赤いショートカットや非婚式が選択で尊重され、これ以上話題にならない日が来るということです。

ホン= 私の人生の哲学は「助言しないこと」です。今まで私に助言してくださった方たちのほとんどがこの仕事を辞めなさいと言いました。あまりにも大変そうに見えるので私のために言った言葉でした。とてもありがたい助言でしたが、その言葉を聞いてその時に辞めていたら後悔したと思います。悩みを聞いた時、共感することだけした方が良いと思います。助言の代わりに、お金でおいしいものはどうですか。「1人式」です。ただ、誰かに助言されても、必ずしもその通りにする必要はないということは伝えたいですね。

 

アイドル世代論 : ① 2020 アイドルポップ世代論【日本語訳】

idology.kr

 

 

아이돌 세대론 : ① 2020 아이돌팝 세대론

アイドル世代論 : ① 2020 アイドルポップ世代論

by 스큅 2020.06.12

 

●今、世代論を語る理由
アイドルの世代区分については、様々な意見が存在する。当初、合意に達するほどの多くの意見が出なかったり、活発な公論の場が形成されたことがなかったためだ。新しい世代のアイドルが出現するたびに、世代論に関する記事はしばしば出てくるが、たいてい個別の時代を散発的に証明するにとどまり、世代論そのものに対する踏み込んだ議論につながらなかった。特に第3世代以降は議論がさらに不十分なのが実情だ。
 
実際、私たちはすでに直観的に世代を一定水準区分している。第1世代はH.O.T.、Sechs Kies、S.E.S.、ピンクル、第2世代は東方神起SS501、SUPER JUNIOR、BIGBANG、少女時代、KARA、ワンダーガールズ、第3世代はEXO、BTS、Red Velvet、TWICEなどと通常区分をつけている。第3世代アイドルのキャリアが上限を維持して数年が経ち、昨年からは第4世代アイドルに関する話が本格的に浮上した。しかし、その区分基準は果たして何なのか?単に市場の循環周期による時代別ヒットグループや製作レーベルの違いなのか?契約満了と「軍白期(軍隊+空白期)」に縛られた勢力図の変化にすぎないのか?
 
今になって世代論を語る理由は、時代別アイドルを分けるフレームを越え、K-POPの歴史に触れる有用な軸としての世代論を確立するためだ。この論文では、K-POPの主導権がますます海外に移っていく一連のパラダイム転換過程で世代論を眺め、国内外にK-POPが構成・再構成されてきた流れを見てみよう。
特にアイドル市場の新しい世代が到来した状況と同時に、COVID-19という前例のない市場危機を迎えた現在、この文章がK-POPの現状を探る議論の土台になることを期待する。
 
 
● 第1世代 : K-POPアイドルの誕生

第1世代は、SM企画(現SMエンターテインメント)が米国のボーイズバンドと日本のアイドルプロダクションから着眼し、ソテジワアイドゥルを参照して出した最初のK-POPアイドルH.O.Tをはじめとする、SM企画とテソン企画(現DSPメディア)の競争構図の下で誕生した初期のアイドルグループ(H.O.T.、Sechs Kies、S.E.S.、ピンクルなど)に代表される。

 

神話、Click-B、god、シャクラ、ジュエリー、BoAなどは、第2世代への移行以前の過渡期的、実験的特徴を持った1.5世代アイドルに分類したりもする。この時期、中国、日本など東アジアの一部地域で韓国アイドルが人気を集め始め、「韓流」の概念が台頭し、一部の日本メディアでは「K-POP」という用語が使われ始める。

 

● 第2世代 : K-POP産業構造の定着 - K-POPの高度商業化と海外進出の本格化

第2世代は経済危機の中でもK-POPが高度に商業化し、現在のような産業構造が定着し、国内市場の萎縮に伴い「現地化」戦略を標榜し、本格的な海外進出を始めた時期だ。BoAの成功モデルに基づいた東方神起を始め、その後に続くSS501、BIGBANG、SUPER JUNIOR、少女時代、KARA、ワンダーガールズなどがこの2世代に当たる。この時からK-POPの量的成長が加速し、SHINee、2PM、INFINITE、BEAST、f(x)、2NE1、4Minute、missA、SISTARといった2.5世代のアイドルが爆発的に誕生する。

 

第2世代以降のアイドルは、国内では従来の神秘主義戦略から脱し、親密なイメージを掲げて、さまざまな芸能やドラマに出演したり、自主制作のリアリティショーを発売するなど、音楽分野を超えた万能エンターテイナーとなっている一方、海外にも本格的に進出し、人気を集めている。このうち、特にSUPER JUNIORは中華圏で、少女時代やKARAは日本で大成功を収めている。現在は一般化した「ワールドツアー」も、この世代から国内外の大型ファンダムを構築したグループをはじめ普遍化し始めた。 

 

Rain、SE7ENBoA、ワンダーガールズなど一部アーティストたちは大陸の圏域を越えて米国進出を試みた。彼らは期待したほどの成果を得ることはできなかったが、2010年代初めのYouTubeと海外デジタル音楽市場の成長により、BIGBANGや2NE1などが北米で注目を集め始める。そして2012年に登場したPSYの「江南スタイル」はYouTubeを中心に世界的なブームを巻き起こし、産業内外に大きな衝撃を与えている。

 

●第3世代 : K-POPの脱領土化

このような脈絡の中で誕生した第3世代は「K-POPの脱領土化」が本格化した世代に整理できる。指折りの所属事務所は、国内活動を通じて認知度を高めた後、日本で「現地化」した音楽で外貨を稼いでいた既存の戦略から脱し、YouTubeに代表される超国籍デジタルプラットホームを主軸に国内外の同時成長を図り始めた。本格的に国境の束縛から脱したコンテンツを追求したのだ。

 

各種サバイバル番組をはじめ、持続的でしっかりしたファンダムを確保するためのフリーデビュープロモーションと「世界観」を前面に出したストーリーテリング戦略が普遍化したのもこの時期である。競争力確保のためのK-POPの質的向上も2.5世代を経て第3世代で爆発的に行われた。最も代表的な第3世代アイドルとしては、独特な超能力の世界観を唱え、「EXO-K」と「EXO-M」で韓中同時デビューを果たした「EXO」が挙げられる。また、NU'EST、VIXX、BTS、GOT7、WINNER、Red Velvet、MAMAMOO、TWICE、Lovelyz、OH MY GIRL、GFRIENDも第3世代に当たる。

 

2016年、限韓令の発令を受け、第2、3世代アイドルのメイン舞台だった中華圏市場が封鎖され、K-POP産業は大きな打撃を受ける。その中で、新しい活路を切り開いたチームが、BTSとBLACKPINKだ。 BTSはかつて、TwitterNAVER Vを始めとするSNSを積極的に活用し、日常的コミュニケーションを試みた。また、そのような日常性を作業物に溶け込ませ、大陸や国籍を問わず、様々な海外ファンを集め、2017年、ビルボードミュージックアワード(BBMA)の受賞を皮切りに、北米市場で記録的な成果を上げる。BLACKPINKも、北米で初期のK-POP人気を集めたYGエンターテインメント所属のグループらしく、YouTubeを中心に北米大衆の反応を引き出すのに成功する。そのほか、KARDやDREAMCATCHERなど、 YouTubeやニューメディアを通じて、従来のK-POPへの進出ルートから外れたところで、より大きな反響を得る事例が増え始めている。

 

一方、韓国では2016年、ファンダムにアイドルグループ制作の主導権を握らせた「PRODUCE」シリーズが反響を呼ぶ。この主導権は結局幻想に過ぎないという点が明らかになったにもかかわらず、「PRODUCE」シリーズはK-POP産業にファンダムパワーを前例がなく刻印させ、「プロシューマー(프로슈머)(プロデューサー+コンシューマー)」議論を形成した。国内外を問わずファンダムの声が以前になく大きくなったのだ。

 

SEVENTEENMONSTA XNCTWanna One、BLACKPINK、宇宙少女、I.O.I、KARDなどは、このようなK-POP産業構造の地殻変動を経験しながら成長したグループで、3.5世代アイドルとして区分できる。

 

●第4世代 : K-POPの再領土化

このような激変期を経て、2019年前後に新しい世代の潮流が明らかに感知され始めた。第3世代がK-POPの国境を崩す「K-POPの脱領土化」時代だったとすれば、第4世代は完全に平らになった地帯の上でまた新しい領域を形成していく「K-POPの再領土化」時期に整理することができる。K-POPは米大陸市場の障壁まで超え、完全な脱領土化を成し遂げ、K-POPの主導権はもはや韓国に帰属されない。

もちろん、国内市場が完全になおざりにされているわけではない。まだ、国内での知名度が企画会社がグループの立地を評価する主な基準の一つとして位置づけられ、海外ファンダムでも国内アルバム販売量、音源チャート、音楽番組、年末授賞式での成績を意識している。ただ変わった点は、第4世代になって大陸と国の境界に一切こだわらないK-POPの新しい地平を想像するようになったということだ。

MONSTA X、VAV、NCT、KARDのような3.5世代グループが国内より海外で大きな人気を集めるようになった点、2019年に最大の成功を収めた新人グループとされるTOMORROW X TOGETHERとITZYがデビューと同時に北米デビューショーケースツアーを回りながら海外ファンを確保することに力を入れた点、Stray Kids、ATEEZ、LOONA、EVERGLOWのような新生グループが国内よりむしろ海外市場に照準を合わせている点がある。

SMのWayV(中国)、SuperM(米国)、JYPのBoy Story(中国)、Nizi Project(日本)、ZenithメディアコンテンツのZ-Stars(アジア攻略)のように韓国の会社主導で海外に本拠を置く実験的なK-POPグループが発足したのも「K-POPの再領土化」と説明できる。

 

再領土化はグローバルファンダムの積極的な参加によって行われ、各種SNSをはじめとするニューメディアはこれを可能にした核心プラットフォームである。例えば、第3世代の頃に重要性が高まっていたYouTubeにおいては、ミュージックビデオを中心にK-POPを海外に露出させる窓口の機能を超え、様々な自主制作コンテンツを送出する放送局としての機能が活性化している。

TwitterTikTokなどの拡散性の強いニューメディアは、K-POPコンテンツが活発に共有され、ファンによって再生産される基盤を構築し、日常的コミュニケーションを強調したリアルタイム放送専用フラットフォーム「V LIVE」や、企画会社主導の独自的コミュニティサービス(LysnやWeverseなど)は、世界各地のファンが物理的心理的壁を乗り越え、アイドルスターとの絆や親しみを固めてくれた。

 

また、BTSと「PRODUCE」シリーズは単なるストーリーテリングではなく、ファンが絆を感じることができるメッセージと敍事の重要性を浮き彫りにした。これにより、舞台外の日常的な姿を共有し、固有のメッセージを込めた世界観を唱えたり、デビュー当初からセルフプロデュースを行うなどの方法により、グループ叙事の真正性を確保しようとするグループが増えている。

 

最後に、第4世代再領土化の特性は音楽にも反映される。これは大きく2つに分かれる。ビルボードチャートに浸透しやすい「ビルボード親和的」な音楽を出したり、混種的なダンス音楽で注目されたK-POPの特色を強化して強烈なビートとキャッチフレーズ、ポイント振り付けを伴う「ドロップ」を極大化するというスタイルだ。

 

K-POPアイドル第1~4世代の流れを表で要約して整理すると次のようになる。デビュー年を基準に区分しており、グループで活動していたメンバーのソロユニットデビューは別途記入していない。 (ただし、混成グループは例外)

 

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ここで特記すべき点は、第4世代以前までに発見された男性アイドルと女性アイドルの世代交代の時間差だ。これは企画会社が遅れた、消費者層の規模や好みの変化速度と関連があるものと解釈できる。

男性アイドルの場合、国内外により大きく強固なファンダムを確保しており、スピーディーで多様な変化と成長を要求するファンダムの声を企画会社も機敏に読み上げた。

これに比べて女性アイドルの場合、ファンの規模と集結度、そして(特に女性ファンの)可視化程度が比較的遅く浮上し、経済論理と直結したアイドルプロダクションのパラダイム変化にも時間差が発生したとみえる。また、女性アイドルが伝統的な性役割から脱する機会も遅く与えられたという点も見逃せない部分だ。このような時間差は、女性アイドルのファンダムが男性アイドルに劣らず可視化された第4世代になってかなり縮まった。

 

また、詳述しなかったが、2009年の東方神起のメンバー3人とSUPER JUNIORのメンバー、ハンギョンの契約紛争、そして2014年のEXOメンバー3人と少女時代メンバーのジェシカの契約紛争も、それぞれ世代交代直前に起きた主要事件だ。これは新しいパラダイムを直接的にもたらしたというより、前者は標準7年契約書の制定で、後者は多人数グループの漸進的な萎縮で、次世代アイドルグループの構成に外的な制約を加え、既存体制の弱点を補完する方向に進んだと解釈できる。

 

●第4世代が直面したCOVID-19の壁

時代を重ねてK-POPの主導権は次第に韓国から脱し、アイドルの主な収入源は海外ツアーやYouTube/Spotifyのストリーミング収益になって久しい。しかし、限りないグローバル化に進みそうだった流れは、COVID-19の拡散で大きな壁にぶつかった。予定されていた海外ツアーは軒並みキャンセルとなり、Netflixのような映像ストリーミング市場とは異なり、音楽ストリーミング市場は萎縮している。第4世代が到来するやいなや、そのパラダイムが大きな挑戦を受けているのだ。国内ファンダムを確保するよりも、海外市場に訴求しようとしたグループにとって、その打撃はさらに大きくなっている。

 

業界は素早い対応に乗り出している。国内でのアルバム販売量を促進する上で最も大きな役割を果たしたファンサイン会をビデオ通話イベントで、ツアーの形で収益を牽引してきたコンサートをオンラインライブ公演の中継に変えて収益構造を維持しようと努力している。また、いつにも増してYouTubeコンテンツの制作に集中している。物理空間を越えて平らな地帯を作り、K-POP再領土化の根幹を築いたサイバー空間は、今やオンタクト(非対面)時代の唯一のチャンネルとなった。第4世代が発足したばかりの時点で、そして現在の時局がどれだけ続くか断言できない状況で、第4世代の行方を予測することは非常に難しいが、COVID-19が第4世代の「ニューノーマル」を造形することは自明に見える。

 

● 世代論についての小稿をおわりながら

本世代区分については、複数の反論が存在し得る。まず、多くの人々が全盛期ではなくデビュー年度を基準に世代を分けたことに疑問を示すことだろう。特に、デビュー後、全盛期を迎えるまで長い時間がかかったり、途中で路線変更をしたグループの場合、年度に基づいた区分が曖昧に感じられるだろう。

しかし、グループ別全盛期を基準に世代を区分するには、巨視的な時流の他に、個別グループの微視的な脈絡が作用した部分が大きいだけでなく、全盛期を特定の時期に限定しにくいアーティストも存在する。アイドルの企画と結成過程こそ、アイドルを一次的に規定する重要な基準であり、市場論理の変化を最も明確に確認できる基準だと言える。もちろん、世代別の境界地帯に置かれたグループは、同じ年にデビューしたとしても、すべてを一つの世代にまとめることは難しいという点を周知しなければならないだろう。

そのうえ、第4世代についての話が出始めた時に、3.5~4世代までを含めて世代論をまとめるには確かに無理がある。アイドロジーの内部からも、ボーイズグループの3.5世代を、2015年ではなく2016年のデビューからとみなすべきだという意見があった。iKON、MONSTA Xはその後の世代より第3世代に分類されたWINNERと同一線上に置かなければならず、「PRODUCE 101」の磁場が作動した2016年からを起点とした。しかし、2015年「清涼ドル」と「自主制作ドル」の潮流を打ち上げ、NAVER V発足以前からアフリカTVを通じて疎通放送を試みたSEVENTEENを以前の世代と区分する必要があるという判断で、2015年をボーイズグループの3.5世代に分ける分岐点にした。

第4世代の分岐点もやはり断言は難しい。BTSとBLACKPINKの北米市場成功後、「K-POPの再領土化」傾向が感知されたのは2018年からであるが、市場への波及力を考慮すれば2019年を基点とすべきだという意見も存在し、まだ議論の余地がある。

 

世代論は必然的に粗い区分法であるため、異なら意見が存在せざるを得ないだろう。にもかかわらず、あえてこのように世代論を論じるのは、先に述べたように世代論が「K-POP - アイドルポップ」の歴史を眺めるのに最適な分析体系になり得るからだ。東アジアの辺境から始まったK-POPという雪だるまが、時流に沿って体を大きくし、世界に進んでいった過程を、そして今、この雪だるまがぶつかっている障壁の実体を、我々は世代論を通じてよりはっきり読み取ることができる。世代論に対する論議は、時代の境界を画すのではなく、時流の道しるべを立てる一連の過程になるだろう。

 

 

K-POPの音楽的特性 : 2.5世代を基点に【日本語訳】

www.tonplein.com

케이팝의 음악적 특성 : 2.5 세대를 기점으로

K-POPの音楽的特性 : 2.5世代を基点に
by 양소하(ヤンソハ) 2021.01.04


●はじめに

あるジャンルの特性を分析、整理する作業は、もしかしたら難しく不要なものかもしれない。特にK-POPのようなポップジャンルとして規定される、すなわち一定の特性を持たないまま、それが曖昧に存在するジャンル内での特性を規定することは、さらに難しく不要かもしれない。しかし、K-POPが急成長を続けている2021年に入って、私は現在のK-POPが持つ特性を一度整理する作業が必要だと感じた。これは、K-POPというジャンル自体が持つ特性を整理する作業であるだけでなく、そのジャンルが属している巨大な市場全般に対する規定につながり得ると考えた。さらに、急速に成長を続けていくK-POPというジャンルとその市場の特性を整理する作業が必要だとも考えた。そこで、私はこの文を通じて、現在のK-POPというジャンルの持つ音楽的特性を振り返って、これを簡単に概括する作業を続けるつもりだ。

そして、そのような作業に先立って、いくつかの定義すべき要素が存在する。
まず最初に定義しなければならない要素は「K-POP」というジャンルそのものにある。K-POPというジャンル、あるいは単語自体で韓国という国を表す文字「K」とポップジャンルの「Pop」が合成されて作られたもので、そのジャンルを構成する定義は今でも様々な意味が混在して使われている。例えば、Apple Musicのジャンル区分によると、現在、国内ではK-POPと規定されていないことの多い音楽がK-POPに分類されるなどのケースが発生したり、国内でもDAY6、ONEWEなど、K-POP企画会社に所属しているバンド形式のアーティストを、K-POPと規定できるかについての議論が起きたりする。
したがってこの文章では、K-POPについてより確かな定義を規定した後その説明を続けるべきである。私がこの文で扱おうとするK-POPの主な定義は「ダンス音楽を基盤とするアイドルグループ、ソロアーティストのポップミュージック」と整理することができるだろう。

また、続いて定義すべき要素としては、タイトルから登場するK-POPの世代論に対する観点にある。K-POPを世代論的観点から分類する作業は、K-POPがより大きな市場への成長を成し遂げた2000年代からよく行われてきたもので、現在ではより速い成長の速度によって、その世代の分類がより曖昧になっている。
私は本コラムで借用する世代論的分類方式を「アイドロジー(idology)に掲載されたスクイップの定義」(http://idology.kr/13070)を通じて続けていこうと思う。これは当該分類方式が持つ正当性に大きく同意するだけでなく、それが分類する世代論の観点が私の観点と最も近いからだ。もちろん、該当文で提示される分類法に比べて、本コラムで扱おうとする世代論の分類法はそれが含んでいるK-POPの要素が著しく少なく、それによって前の文と完全に同じアプローチを取ることはないだろう。しかし、その基盤にある根源的な観点からは、スクイップの分類を基準に文を作成したことを再度明示する。そして私は、前述した2つの定義、すなわちK-POPというジャンル自体の定義と、K-POPを分類する世代論的観点の定義をこのように規定した後、本格的な概括を始めようと思う。


●なぜ2.5世代以降のK-POPなのか?

しばしば2.5世代のK-POPに分類される、2000年代後半のデビューグループから始まる世代のK-POPは、事後的な視線から見て、現在のK-POPの根源となる最も近い基盤として位置づけられている。例えば、2.5世代に入り、K-POPはそれまでのメインステージであった国内や東アジア市場を超えて世界中の音楽市場へと手を伸ばし始めた。このような成長の勢いの加速に伴い、同時にK-POPというジャンルの持つ音楽的クオリティとその特性は発展を重ねることになる。現在のK-POPで活用されるエレクトロニックジャンルの導入の基底を示したSHINee、f(x)等のグループも2.5世代に分類されている。また、第2世代に入り、K-POPが特定のファンダムが享受するジャンルを越えて全国民が楽しむジャンルに跳躍し、これに伴って発生した多様な現象、例えばファンダムの発展とK-POP市場全般の量的成長などの現象が2.5世代に入ってより確実に定着し始めた。それと共に、成長する市場に足並みを揃えて多様な音楽、企画的試みが行われた点も特記に値する。
このように、2.5世代のK-POPは市場の規模、音楽企画面での発展などを筆頭に、様々な部分で現在のK-POP市場の根源となる要素を定着させた大きな基盤に残った。そのため、私は2.5世代以降の、よりはっきりした規定を受け始めたK-POPの音楽的特性を探求することを決めた。また、そのような音楽的特性を探求するにあたって、合わせて3つの要素を基準に、それを二分しているK-POPの音楽的特性を例示とともに取り上げるつもりだ。
また、この記事では2.5世代以前のK-POPと現在のK-POPを比較、分析する作業よりは、2.5世代以後のK-POPにもっと焦点を合わせ、それによる特性を整理する作業が続く予定だ。したがって、本コラムを書くにあたって2.5世代を中心的な基準にしてはいるが、それ以前と以後のK-POPを二分して対照することでそれぞれの特性を整理するよりは、2.5世代を基準により確固としたK-POPの特性を整理して議論を展開することをもう一度強調する。

 

●2.5世代以降のK-POPの音楽的特性⑴ - ストーリーテリング

まず、2.5世代以降のK-POPの音楽的特性として語ることができるのは、ストーリーテリングだ。ストーリーテリングはただ一つの要素ではなく、K-POPが企画と音楽を通じて実現しようとする多様な特性を含んでいる。 特にストーリーテリングは、K-POPの音楽内で、叙事(서사)とコンセプトという2つの要素で具現されたりする。 
まず、叙事という要素に集中してみると、叙事は主に「音楽的キャリア内での連続作」と同じ意味で扱われることもある。 例えば、BTSの「花様年華」、「LOVE YOURSELF」とGFRIENDの「学校」、IZ*ONEの「花」3部作などは、簡単に思い浮かべるK-POPでの音楽的敍事の事例に当たる。
このように叙事というストーリーテリングの要素は、"特定のグループが自分のキャリア内で特定のテーマと素材を中心に連続的な属性を持った作品を相次いで発表する"という特徴とかみ合う。

そして、このような叙事はK-POPが音楽を通じて提示することができるストーリーテリングの側面において、より細密な、あるいはより巨大な話の枠組みを持つことができるという点で利点を持つ。また、その巨大な枠組みの中で特定のテーマと素材を中心に多様な音楽的、あるいは企画的試みを遂行できるという点もやはり叙事という特性が持てる強みに当たる。
このように、K-POPストーリーテリングが含有する特性のうち、叙事という要素は通常、デビュー後キャリアを展開していく上で遂行される作業であり、彼らが具現しようとするナラティブをより大きく、あるいは多様に遂行できるという点で、現在もよく活用される要素でもある。

 

叙事という特性が主にアーティストのキャリアに基づいたまま行われる要素だとすれば、コンセプトはより短期的、あるいは非常に長期的に行われるストーリーテリングの要素だ。コンセプトという要素は主に二つに分けて遂行される。一つ目は特定作品に限定されるコンセプトで、二つ目はアーティストが完全に含有するコンセプトに分けて見ることができる。

例えば、最初のケースは以前のK-POPからよく活用され、現在も主に活用されるコンセプトの活用方法だ。例えば、清涼感を筆頭に快活なイメージを披露したデビュー初期のSEVENTEENのコンセプトや、夢幻的な雰囲気のサウンドと歌詞で神秘的な姿を披露したOH MY GIRLの作品などが例として挙げられるだろう。もちろん、このように特定の雰囲気、スタイルだけで構成されるコンセプトだけでなく、特定のテーマや素材を通じて作品を作り出す場合もある。チアリーダーという素材を通じて慰めと励ましのメッセージが持つ特徴を浮き彫りにしたTWICEの「Cheer Up」を代表的な例として挙げることができるだろう。このようにコンセプトは特定の作品内でその作品が持てる雰囲気やスタイルなどを確実に作り出すことも、またその作品が披露しようとする要素をさらに浮き彫りにする方向で活用されることもある。

特定のアーティストが自分だけのコンセプトを持つようになるきっかけには、主に2つあるだろう。第一に「世界観」という存在にある。EXOをはじめとし、K-POP市場内に深く根ざした世界観という企画方式は、アーティスト自体が持つスタイルを確固たるものにするだけでなく、様々なストーリーとナラティブを含んで披露できるという点で、現在まで様々な方面で活用されている。 例えば、DREAM CATCHERの場合、「悪夢」という素材を中心とした世界観を筆頭に、これに似合う暗い雰囲気のロックを中心とした音楽を披露し、市場内で独特な地位を固めた。また、LOONAの場合、Loonaverse(루나버스)という彼女らだけの巨大ながらも細密な世界観を構築し、それを音楽と企画の多様な方面で具現したりもした。特にLOONAの場合にはアーティストの世界観を多様な分野で、例えば作品のコンセプトとサウンド、歌詞、ミュージックビデオなどの方面で具現化し、彼女らの世界観を通じて聴者とファンにもっと多様な楽しさをプレゼントしたりもした。このように世界観という企画方式は、特定のアーティストに確固たるコンセプトを定着させ、アーティストとして持てるスタイルをしっかりと構築する。また、これを通じて実現できる様々な話を通して、聴者とファンにひとつの遊びの種をプレゼントする。すなわち、多様な価値を含む方法として活用されている。

このような世界観に続き、アーティストがコンセプトを持つようになる2番目の方法としては、アーティストに特定のスタイルを付与する方法に整理することができるだろう。ここでのスタイルとは、音楽的にも企画的にも与えられる特定のテーマ、あるいは雰囲気を意味する。

例えばRed Velvetは、強烈な印象のレッドと柔らかな印象のベルベットという2つのコンセプトに分け、自身のキャリアを展開させる方式を選んだ。特にRed Velvetは、彼女らが持っている2つのコンセプトを確実な音楽的特色で具現し、これを刻印させた。例えば、レッドコンセプトでは乱雑で強烈なダンス音楽を、ベルベットコンセプトでは繊細で柔らかいR&B風の音楽を披露し、彼女らが持っている二つのコンセプトを音楽内で積極的に活用した。

このようにコンセプトというストーリーテリングの要素は、時には作品内に、時にはアーティスト全般にわたる要素として存在し、それを通じて見せることができる多彩な音楽的スタイルを作り出すのに役立っている。


大まかに把握できる歌詞とコンセプトという主要な2つの要素からなるK-POPストーリーテリングという特性は、2.5世代以降のK-POPにおいてより重要な特性として扱われている。何よりも、第3世代の始まりにあるEXOから派生した"世界観"という企画方式、あるいはさらに普遍化した"コンセプトと叙事"という企画方式は、アーティスト、あるいは特定の作品が持つナラティブとスタイルをより明確にすることで、音楽が持つ作品性とこれを聞く聴者とファンが楽しめる要素をより多彩にすることができるという点から、市場内でより重要な要素として考えられている。

しかし、K-POPというジャンルの音楽の中で、ストーリーテリングという特性が必ずしも伴わなければならないわけではない。例えば、NCTの場合「無限開放、無限拡張」というコンセプトを持っているが、これは企画的な側面だけで彼らのコンセプトが音楽に及ぼす影響は少ないと見ることができる。

また、Stray Kidsの場合、自主的に音楽を制作するアイドルという独特の特徴と彼らだけの明確な音楽的色彩を持っているが、これは特定のストーリーテリング的要素を伴っていると見ることは難しい。このようにストーリーテリングは、K-POPの音楽内で活用されないこともあり、必ずしもその有無が作品性や興行の有無に関与するとは言い難い。
しかし、ストーリーテリングは、2.5世代以降、K-POPの要素の中でも確かに重要に扱われる要素であり、それが持つ肯定的な特徴が多いため、現在までもK-POPの音楽や企画過程において、よく、そして重要に思われる特性として残る。


●2.5世代以降のK-POPの音楽的特性⑵ - ダイナミック

K-POPのダイナミックについて話す前に、それが登場するようになった発端について先に話す必要があるだろう。前述した第2世代のK-POPが、特定のファンダムの享受を超え、全国民から愛されるジャンルになれた最大の理由の一つは、フックソングの浮上にあっただろう。実際に当該時期に発売された数多くのフックソングの存在だけでなく、当該時期にフック現象およびK-POP内のフックソングに関する研究が数多く行われたこともまた、その現象を立証する重要な手がかりとなるであろう。

何人かの研究者の言葉を借りれば、カン·ヒョングとコ·フンジュンは当時、K-POPの重要な音楽的特性としてフックの要素を挙げ、ワンダーガールズの「Tell Me」以降すべてのアイドルグループがフックソングを基本とする音楽を使うとした。このようなフックソングの特徴に対し、イ·ナンスは短くて魅力的なサビの繰り返し、率直で簡潔な歌詞、華やかな群舞、豊かなサウンドなどを挙挙げている。さらに、より詳しい研究を遂行したチョン·チャンジュン、チェ·ソンヨン、ペ·ミョンジンは44拍子、平均123bpm、平均41%の反復句比率、平均31秒の反復句開始時間などを、ヤン·ジョンモとキム·ジンはリズミカルな速いテンポ、1~2 つのコードパターンの繰り返し、同型進行等の特徴を示した。このように、当時様々な方面で研究が行われたフックソングの存在は、K-POP市場内で非常に強力な役割を果たしていたことは確かだった。

しかしそれでも、その有効性についての議論は引き続き高まった。特に、その当時蔓延していたフックソングの登場とK-POPの量的成長があいまって、次々と出てくるフックソングへの大衆の不満は日増しに激しくなり、結局、2.5世代に入りK-POP市場の解決課題の一つは、このようなフックソングの単純さやこれへの不満を脱することが決まった。そして、このようなフックソングの問題点を解決する方法として、多くのアーティストと企画会社が選んだ方式は、多様な要素の結合を通じて躍動性を、すなわちダイナミックさを提供する方向であった。


ここで様々な要素は、音楽のジャンルにも展開構造や曲の楽曲構成にもなり得る。 そのように本当に「多様な」要素が1つの音楽に含蓄されながら、2.5世代以降、特に第3世代のK-POPが持つ多彩な特性を中心に躍動性を提供することで、以前存在したフックソングの単純さという問題から脱皮しようと努力した。

例えばRed Velvetの場合を見てみよう。Red Velvetは、そのグループが持つ二つのコンセプトのうち、特にダンス音楽、エレクトロニックジャンルを消化するレッドコンセプトにおいて、様々な躍動性を見せている。しかし、これは時には乱雑なほど繰り返される反復句の登場にもなり(「Dumb Dumb」「Rookie」)、または非常に独特な展開方法と曲の構成により(「Ice Cream Cake」「짐살라빔(Zimzalabim)」)、遂行された。

また、最近の事例を見てもこのような傾向が続いていることが分かる。シグネチャーの「문무나마 (Nun Nu Nan Na)」の場合、それが持つ楽曲の多様性とボーカルの快活さ、高歴代と低歴代の衝突などを通じてはっきりした躍動性を生み出している。

Stray Kidsの「神메뉴(God's Menu)」は「麻辣味」という新しいスタイルを具現化すると同時に、それを筆頭に、鋭く強烈なサウンドの存在とそれに続く変奏、メンバーたちのラップとボーカル、そしてサビパートのサウンドの食い違った調和などを通じて、トラック内で引き続き登場するダイナミックな構成を披露した。

このように、K-POPの音楽の中で「ダイナミックさ」という要素は現在に入って、より重要な要素として定着しており、それが届ける刺激と独特な楽しさは、K-POPならではの独特な音楽的特徴として定着している。特に、昔からの様々なエレクトロニックやR&B、ヒップホップなどのジャンルを取り入れたK-POPの歴史に沿って、現在では一つの曲の中で様々なジャンルがかみ合って登場することもよく活用されている。サビ以降、突然のトラップビートの登場によってラップパートを挿入する方式は、今では数え切れないほど多くの事例が存在し、強烈なヒップホップ、あるいはエレクトロニックビートと柔らかいR&B風のメロディが重なり、そのような落差を通じて躍動性を再現する場合もある。

そのして第3世代以降、特に2010年代後半に入ってさらに激しくなっているK-POPのダイナミックさは、フックソングの単純さから脱却するという理由を皮切りに、それだけが届けられる面白さを含んでいるという点で、様々な方法でその活用性を広げている。


しかし、前述のストーリーテリングと同様に、K-POPのダイナミックさも同様に、ジャンルの音楽で必ず行われるべき要素として存在すらわけではない。むしろ、K-POPのダイナミックさとは逆の、滑らかで流麗な進行を通じて興行に成功したり、より多くの大衆の人気を得る場合も存在する。

例えば現在自他ともに認める最大の興行を記録したBTSがその重要な例になるだろう。 以前から、BTSは彼らの曲内でK-POPな躍動性を見せるよりも、流麗な進行と(???)の存在によってかなり人気を得てきたが、たとえば「불타오르네(Fire)」の場合、典型的なエレクトロニックトラップジャンルの文法に従うと同時に、強烈なドロップパートを中心に華麗な展開を披露するトラックで、確かにトラック内に躍動性が存在しているが、それはエレクトロニックトラップジャンルの根本的なダイナミズムとして存在するだけであり、K-POPのダイナミズムと同一であると見ることは難しい。彼らの英米進出への本格的な歩みとなった「DNA」も滑らかなダンスポップの展開とドロップパートの強烈なシンセサイザーの存在が目立ちはするが、これもやはりK-POPのダイナミズムとはかなり異なる方向への進展を示したと見られる。

また、似たようなケースとしてBLACKPINKの場合が挙げられる。BLACKPINKにおいても、「휘파람(WHISTLE)」「불장난(PLAYING WITH FIRE)」「DDU-DU-DDU-DU-DU」などのトラックから、よりエレクトロニックポップな流麗な展開と強烈なドロップパートなどを中心に多くの人気を博している。

あるいはこれと逆の例も存在するが、特にメロディを中心とする場合がそうである。主にガールズグループの間で発見されるこのような場合は、メロディーの流麗な進行のためにその躍動性を放棄する方法を主に活用する。OH MY GIRLの場合「Closer」などのトラックを通じてより夢幻的なメロディーを中心に活用し、躍動性よりは流麗で繊細な展開を曲の主な構成方法としている。

Lovelyzも「Destiny」、「그 시절 우리가 사랑했던 우리(Beautiful Days)」などのトラックを通して、よりメロディーを中心にした曲の構成を披露している。このようにメロディーを主な要素に活用するグループとトラックの場合も、先に説明したK-POPの躍動性とは逆の特性を持っていることが分かる。

しかし、このような方式、例えば、(???)とポップスの滑らかさを重視する場合と、メロディの流麗な展開を活用する方式においても、彼らが目指すところが以前の単純さから脱皮し、より華やかな面白さを提供しようとする、すなわちK-POPのダイナミズムが発現した理由に合致するため、これらも2.5世代以降のK-POPが目指すところのような方向へと発展していることが分かる。

 

●2.5世代以降のK-POPの音楽的特性⑶ - ボーカル運用

単に複数の人員で運営されるグループであれば、そのグループの様々な声を運用する作業は必ず行われるべきである。K-POPは以前から主に4人以上のグループで存在しており、そうしたメンバー同士のボーカルとラップなどを運用する方式も以前から必ず存在してきたと言える。しかし、こうしたボーカル運用の重要性は2.5世代に入ってさらに浮き彫りになった。

その理由には、単にK-POPの音楽とその市場だけでは説明できない数多くの原因が存在したはずであり、それは特にメディアの方向性と適合すると考える。2.5世代前までのK-POPは、その当時のメディア環境と簡単に結びついており、特にTVと放送局という巨大なメディアの下で運営されていたK-POPグループの場合、個々人の特性が非常に強調されていたと言える。もちろん、そのような個人の特性は、単に音楽に限らず、芸能、演技などでもその手を伸ばし、音楽内においても重要な要素として活用された。 実際、その頃のほとんどのグループには「ポジション」というものが存在し、それは前述の音楽、演技、芸能などに分かれたり、あるいは音楽内でメインボーカル、サブボーカル、メインラッパー、リードダンサーなどの役割に分かれていたりした。音楽の中でやはり個人の特性が強調されているが、それは単にメンバーたちの個性が強く作用しているという点だけでなく、より明確なボーカルとラップ等の結合や和声等の調和の瞬間があまり登場しなかったという点からもその事例を窺うことができる。

このように個々人の特性がより強調されていた以前のK-POPに比べて、2.5世代以降のK-POPに立ち入る様々な要因により、例えばニューメディアの成長によって変わってしまった媒体の影響と多人数グループの普遍化、K-POP市場の世界的な成長などの要因により、K-POP内での特性も個人からチームにその中心が移り始めた。 

例えば近い例として、現在のK-POPグループでの「ポジション」という要素は大きく重要でない要素に転落している。かつて存在していた固定ポジションの定義を離れ、さまざまな役割を果たすメンバーが増えたこともあり、かつては存在した「リーダー」の存在が色あせたこともある。また、一つのグループに多数のメインダンサー、メインラッパー、メインボーカルなどが存在し、より多彩で高いレベルの音楽を披露することもできた。

このように、現在のK-POPに入ってからは、個々人の特性と個性を生かしたポジションという存在が色あせると同時に、これを強調するよりはメンバーの組み合わせを重視する傾向が強くなった。


そのようにチームとしての比重がますます大きくなるにつれて、K-POPの音楽的特性である「グループ」という存在性を証明する複数のメンバーの声を運用する方式はもっと多様になった。 特にそのようなボーカル運用がK-POPに活用されるにあたっては、以前から存在するR&B式のボーカル運用方式、すなわち和声を中心としたボーカルの結合方式が主な方法として採用された。

例えばEXOの場合、優れたメインボーカルが多数存在し、多くの人たちのボーカルを一曲に盛り込むにあたって、和声を主導的に活用する方式を選んだ。これは「Call Me Baby」と「Tempo」で際立つアカペラ形式のパートでも主に活用され、「Love Me Right」、「Monster」、「Ko Ko Bop」など、その音楽のコンセプトとスタイルがはっきりとしたトラックの中でも、特徴を持つ。

あるいはRed Velvetもこのようなボーカル運用が目立つグループの一つである。特に彼女らのR&B的要素が目立つベルベットコンセプトの場合において、「Bad Boy」、「Automatic」等のトラックでは、そのR&B風のボーカルを活用して多彩な和声とボーカル、ラップの運用等を通じて彼らのボーカルを確実なR&B式のボーカル運用方式に昇華した。 

またLOONAにおいても、彼女らのボーカル運用が重要になっているグループとして、様々なユニットとソロ活動などをベースにしたボーカル運用を行なっている。彼女らの完全体活動である「Butterfly」、「Cuiorsity」等においても、多人数メンバーの声を適材適所に活用し、また彼らの特性に応じて多彩な音域帯を満たす等により、効果的なボーカル運用を見せている。さらに、ONFの場合も「사랑하게 될 거야(We Must Love)」、「신세계(New World)」などのトラックを通じて、様々なメンバーたちのボーカルとラップがそれぞれの役割を確実に果たしている。それと同時に、各自の魅力をはっきりと見せながら彼らの優れたボーカルラップ的力量を披露したりもした。 

このように2.5世代以降のK-POPにおいて、多くのメンバーとダイナミズムを中心としたK-POPの音楽内でメンバーのボーカルを効果的に運用することはとても重要な特徴となっており、特に適材適所に各メンバーのボーカルを配置する作業はK-POPのボーカル運用方式の中でも最も重要な位置を占めるようになった。

 

●おわりに

私は先立って、2.5世代以降のK-POPの音楽で主として位置づけられる特性であるストーリーテリング、ダイナミック、ボーカル運用について説明した。もちろん序論で述べたように、音楽の特定ジャンルを、特にポップジャンルに分類されるK-POPに対する音楽的特性を分類して定義する作業はとても難しく、もしかしたら必要ない作業かも知れない。しかし、K-POPの歴史が徐々に長くなり、彼らの作業物が積もり、次第に確実になっている音楽的特性を整理する作業は、確かに今必要な作業だと考えており、かつてのK-POPを振り返ると同時に、その後のK-POPを予見できることだと考えた。

2.5世代を基点に、現在のK-POPを重要に支える3つの音楽的特徴であるストーリーテリング、ダイナミズム、ボーカル運用は引き続きK-POPの音楽を区別する重要な要素として位置づけられ、これと共にそれらは絶え間ない発展を続けるだろう。特にK-POPが国内市場とアジア市場を越え、英米圏市場を越え、全世界に広がっている現在において、K-POPを少しでも規定して整理する作業は必ず必要だと思った。そのため、私はこの文で整理した3つの特性を中心に、より多様なK-POPの特徴を整理する作業を要求している。またそのような特性を分析することを筆頭に、K-POPに対する視線がさらに多角化し、これを通じてK-POPがさらに発展できるきっかけになればという願いを込めてこの文を締めくくる。